彼女と彼女の新たな朝

　家から出たら、利央が立っていた。当然。だって家近いから（正確には、近くなったから）一緒に行く約束をしていたから。だから、当然。「家の前」が集合場所だから。
「なぁんか、変な感じ、なんだよなー」
　首を傾げる利央に、なにがよ、と訊ねる。
「んー？　だから、イオリがそこから出てくるの。だって前までそこ、誰も住んでなかったわけだし」
　と、私の家を見上げる利央に、まあ確かに違和感はあるかもしれないわね、と返す。
　築何十年か経っているらしいが、住むに至っては別段問題は無い。というか、入る時に軽くリフォームしてもらったし。元の持ち主が丁寧に使っていたことも関係しているのかもしれない。詳しいことは知らないが、元の持ち主が仕事の関係でここを離れることになってから、ずっと空き家になっていたらしい。いつからだったかは、興味が無かったので憶えていないが。
（まあ利央が変な顔してるとこから想像すると、少なくとも利央が生まれる前からってのはわかるけどー）
　そんなことを考えながら、ふぅむ、と唸っている利央をおいて歩き出す。
「あ、待ってよイオリ！」
　後ろから、ぱたぱたと音がする。
　微かに、笑みを浮かべた。

　――――うん。悪くない。

　この生活はなかなかに気に入りそうだと思った。

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