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「今の人って、」
言ってから、悩む。なんて言おう? いろいろとわからないことが多くて、何を優先するべきなのかすらもわからない。
悩んでから、
「一年生、ですか?」
「いんや、二年二年」
ってことは、あたしとおんなじ…同級生、か。まあ確かに一年には見えなかったよねぇ、とその事実を知ってからそんなことを思ってみる。
「明日転校してくるから、この学校に。随分前から朝のSTで連絡してたはずなんだけど」
「あー…」
意味もなくそんな声を発した。色々と、誤魔化すために。乾いた笑みを浮かべてみせる。言われてみれば転校生がどうのこうのって言っていた気がしないでもない。イオリもどんな人だろうねとか言っていたような記憶も…曖昧だが、ある。と思う。たぶん。
基本的にあたしは、STでの連絡なんて、聞いてるフリして聞いてない人だ。つまり何をするともなくぼーっとしている、と。まあ漫画読んでたり音楽聴いてたりする人よりは良いはずだ。聞いてないってところは変わりないんだけどね。
「ま、クラスメートになるんだ。仲良くしてやってな」
「はい……ぃい?! くら、め、え…うちのクラス?!」
無意識のうちに返事をし、直後その言葉の意味を理解して、思わず顔が引き攣る。なんだ知らなかったのかと夏夜先生が目を瞬かせた。
しかし次の瞬間にはにんまり、といつものようなどこか少年のような、もっと限定するなら『悪戯好きの』少年のような、そんな笑みを浮かべて、
「さてはSTの時に寝てるクチだなぁ?」
「寝てませんッ」
似たようなものだけど。と、心の中で付け足した。
夏夜先生の表情は変わらない。このままだと更なる追及の手が伸びてきそうだ。回避しようと、あたしは話の矛先を変えることにした。
「そ、それにしたってなんで夏夜先生があの転校生の子と一緒に? 学校の説明するにしたって、それって担任の仕事だと思うんですけど」
「ああ、説明ね。聞いてきたって言ってたよ」
なんとか成功したようだった。…でも、ホント知り合いっぽいな。言い方からして。どういう関係なんだろう? 前の学校で担任してたとか? 前の学校…あるのかな。ここが初任なんだとか言っていたような気が…あったかなかったか、いまいち記憶にない。いやそれは置いといて、つまり、
「あー、えっとね」
あたしの表情からそんな疑問を読み取ったらしい。別にあたしが思っていることを顔に出しやすいとか、そういうことじゃないと思う。誰だって、そんな疑問を持つだろうし。
夏夜先生は珍しくも途方に暮れた様子で眉尻を下げた。
「なんていったら良いかなー。…まあ、わかりやすく言うとね、姉弟なんだわ」
はて。一泊置いて、口を開いた。
「…誰が?」
「アタシが」
「誰と?」
「冬夜――って、さっきのヤツね。アイツと」
改めて言われてから、夏夜先生の顔と、トウヤという彼の顔を思い出し、比べてみる。…まあ、髪の色は似てるね。暗くて顔はよく見れなかったけど、もしかしたら共通点があるのかもしれない。ないってこともないだろう、姉弟なんだし。
そこで、先程彼に感じた既視感を思い出した。ああ、だからか。納得。
ダブって見えたんだ。一瞬だけど。
++ 近江利央(オウミ・リオ) ++
青い空を見るのが夢。面倒臭がり屋だが、苦労性。
++ 久遠イオリ(クオン・イオリ) ++
利央の幼馴染兼親友。小一からずっと同じクラスという仲(利央曰く、腐れ縁)。面白いことが好き。
++ 加嶋夏夜(カシマ・カヨ) ++
写真部顧問。男勝りな性格。部室である資料室を占拠している本やら何やらは、大半がこの人の私物。
++ 加嶋冬夜(カシマ・トウヤ) ++
夏夜の弟で、転校生。空色の瞳を持つ。