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そうしていつか見上げた空が、青く澄んでいると願って。
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 パシャッ
 音が鳴った。それはあたし――近江利央にとってとても好ましい音だ。一人にんまりと笑う。今日の出来は上々。ふう、と満足して息を吐いてから立ち上がった。それからなんとはなしに外を見て、
「げ…」
 …真っ暗だ。
 どうやらかなり熱中していたらしい。まあ、夜が近付く分だけ雨足も弱まるので、あながち遅くなってから帰るのも悪くないんだけど。
(ていうか、イオリどこ行ったんだろ~…)
 暗くて長い廊下に、金色を探す。今年で11年目の腐れ縁が続いている幼馴染兼親友の久遠イオリのその金髪は目立つから、遠目でも居ればわかる。碧眼も印象的なのだけれど、それは距離が離れていたらわからない。光なんかを放っていたら別だけど………止めよう。想像しただけで不気味だ。夜の学校の廊下に目だけ光っていたら本当にかなり不気味だ。
 にしても、彼女は本当にどこへ行ったのだろうか。
「…………あ」
 記憶を引っ張り出して、気付く。そういえば、今日は用事があるから先帰るって言っていたような…。忘れてた。
 はあ、とため息とも取れるような息(あたしとしては、そんな気は少しもないのだけれど)を吐いてから、傍らの壁に立て掛けてあった鞄を手に取る。昇降口に足を向け、―――窓から見えた部室であるはずの場所に明かりが灯っていたため、その動作は中途半端なところで止まった。
 しばし逡巡。
 あんな物置部屋…もとい資料室、写真部以外の誰かが、いやむしろ写真部のあたしたちだってミーティングでもない限り寄るなんてことまずない。でも、じゃあ、なんで明かりが点いてるんだろう?
(誰か居るのかな…)
 うーん。…居なかったら、消し忘れってことになる。そうなると怒られそうなのはうちの部活だ。それは嫌だ。
 仮に誰か居たとしても、確り釘を打っておかなくちゃいけない。余計なものに手を触れないでください、って。何しろあそこは約一年掛けてこつこつとあたしが掃除しているわけで(その割りには一向に部屋が片付いていないけど)。その途中で物を別の場所に移動されでもしたら困る。あそこに着いた時点で場所が変わっていたとしても、とにかく犯人だけでも特定しなくては。でもって後で片付けに協力してもらう。どうせ写真部の誰かだろうし。
 思いながら、あたしの足は自然とそちらに向いていた。

 後悔先に立たずというけれど。今回は(今回も、か?)まさしくその通りだった。
 行かなければ良かったと思うのは、いつだって行った後なのだから。

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登場人物

++ 近江利央(オウミ・リオ) ++
 青い空を見るのが夢。面倒臭がり屋だが、苦労性。

++ 久遠イオリ(クオン・イオリ) ++
 利央の幼馴染兼親友。小一からずっと同じクラスという仲(利央曰く、腐れ縁)。面白いことが好き。

++ 加嶋夏夜(カシマ・カヨ) ++
 写真部顧問。男勝りな性格。部室である資料室を占拠している本やら何やらは、大半がこの人の私物。

++ 加嶋冬夜(カシマ・トウヤ) ++
 夏夜の弟で、転校生。空色の瞳を持つ。

プロフィール
HN:
岩月クロ
HP:
性別:
女性
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