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そうしていつか見上げた空が、青く澄んでいると願って。
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「……………」
 気付いたらソファで寝ていたようだった。
 それにしても懐かしい夢を見たものだ。私はフッと笑いながら、髪を掻き揚げた。長く伸びた金色の髪が、正直なところ鬱陶しくてかなわない。あの頃はもっとずっと短かった。確か、今の利央と同じくらいか…いや、もっと短かったかな。私の今の髪は…ちょうど、あの頃の利央と、同じくらい。
 彼女のように、横に結ぶことはしないけれど。
 でも…だからだろうか。鬱陶しいと思いながらも、なかなか切る決心がつかない。
 それにしたって、こんなところで寝てしまうなんて、自覚はないが、疲れていたんだろうか? 特別、疲れるようなことをした覚えはないけれど…。
 んー、と伸びをしながら立ち上がる。制服のままだった。ヤバイ、皺が寄る。と、制服に手を掛けたところで、電話が鳴った。とりあえず無視する。しばらくすると、切れて―――――もう一度鳴り始めた。
 仕方がない。制服から手を離し、受話器を持ち上げ、耳に当てる。
「はい、久遠です」
 セールスの電話だったら問答無用で切ってやる。そんな決意を固めながら、相手の返答を待つ。
『…………なに、なんか不機嫌?』
 聞こえた声は、先程夢の中に出てきた人物のソレだった。ちょっとばかり拍子抜けしたが(だって珍しい。学校では一緒だけど、電話することはあまりないから)、気を取り直し、
「セールスだと思ったのよ」
 言い訳開始。そして終了。これだけ、だ。これだけで通じるだろう。
『そう、だから一回目出なかったわけか。…なんとなく予想は付いたけど』
「あら、そうなの? ま、長年連れ添ってきた仲だものね。そのくらいわかっちゃうわよね」
『………なんか変な言い回しで色々と引っ掛かるんだけど、まあとりあえずそういうこと、だよ』
 ため息混じりの言葉に、何故だか笑えてきて、くすくすと笑っていれば、電話越しに少しだけむくれた彼女の気配を感じた。実際に見てはいないが、本当にそんな顔をしていると自信を持って言える。…わかるもんよ、なんとなくね。
「それで?」
 笑うのを止め、言う。
「用、あったんでしょう?」
『ああ、まあ…うん』
 歯切れが悪い。珍しい、わけでもないけどね。とりあえず黙って言い出すのを待ってみる。これが一番の良策だ。無理に訊き出そうとするのは良くない、というのは長い経験からくるものだ。間違ってはいない。
『ええっと……イオリ、今から出れる?』
「どこに?」
 いまいち要領を得ない。こういう時は、言いにくいことを言おうとしている時と決まっている。さて、だけどそれは良いことか悪いことか…どっち?
 少し間が空く。
 それから、ていうか、と言い直して、
『来れる? あたしの家』
「んー…」
 時計を見る。もうすぐ六時を回ろうという時間帯。あまり家を空けたくはないのだが…。
「まあ、行けるんじゃない?」
 問題は無い、だろう。というか、何がそんなに言いにくいのか、それを追求したいという気持ちもある。基、理由の大半は、それ。
『って、何その他人事みたいな言い方…アンタのことでしょうが』
「ま、細かいことは気にしない気にしない」
 あはは、と笑って、
「それじゃ、そっち行くから」
 そう言って、電話を切った。

 それにしても、ホント、珍しい。
 私は首を捻った。
 一体、どうしたのだろう?

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登場人物

++ 近江利央(オウミ・リオ) ++
 青い空を見るのが夢。面倒臭がり屋だが、苦労性。

++ 久遠イオリ(クオン・イオリ) ++
 利央の幼馴染兼親友。小一からずっと同じクラスという仲(利央曰く、腐れ縁)。面白いことが好き。

++ 加嶋夏夜(カシマ・カヨ) ++
 写真部顧問。男勝りな性格。部室である資料室を占拠している本やら何やらは、大半がこの人の私物。

++ 加嶋冬夜(カシマ・トウヤ) ++
 夏夜の弟で、転校生。空色の瞳を持つ。

プロフィール
HN:
岩月クロ
HP:
性別:
女性
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