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そうしていつか見上げた空が、青く澄んでいると願って。
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「なぁんか梶木先輩、異様に静かよねえ」
 同じことを思っていたようで、イオリがこそこそとあたしに耳打ちする。といっても然程広くはない資料室。声は筒抜けだったけれど。幸か不幸か、当の本人はなにやら考え込んでいるようで、こちらの言葉は耳に届いていないようだ。
 いつもは何か無駄にキラキラと光っている(もちろん比喩だ。けどあの人、ホント悪戯とか厄介事とかが大好物だからな…)紅い瞳は、どこかぼうっとしている。
「そうッスよね。なんかこう、逆に怖いっていうか」
 和羽くんもむう、と眉を寄せてちらちらと梶木先輩を見やる。
「うん。…どっちにしたって、あんまり良い予感はしないよね」
 あたしは肩を竦めると、
「逆井先輩、何か知ってます?」
 なんだかんだ言って梶木先輩と仲が良い(といったら全力で否定されるだろうが…いや梶木先輩の方は肯定するだろうな)彼に訊いてみる。
 が、
 なんで自分に訊くんだと言わんばかりの表情で、眼鏡に手を当てながら、その奥で不機嫌そうな光を帯びている紅い瞳(この前梶木先輩が「お揃いだネ☆」とかふざけて言ったら、米神に青筋が浮かぶほど不快感をあらわにしていた。どうやら禁句らしい)をこちらに向け、
「馬鹿の考えることなんて知りたくもない」
「そうですよね」
 同感です。
 …あ、ちなみにこの部で馬鹿という単語が出たら、それは大半の場合、いつもは騒がしくて妙なことばっかり思いつく某先輩のことを指します。
「近江先輩、そこは即答で肯定しちゃダメなんじゃないスか…?」
 そういう和羽くんも、そこまで強く否定するつもりはないらしく、そう言うと、琴架先輩が差し出したコーヒーを受け取って、口を付ける。
 一口飲むと、
「枝折先輩は何か知ってます?」
「え? 何がですか?」
 きょとん、と話の内容がわからないらしく、訊き返される。すかさず逆井先輩が、
「梶木の馬鹿、今日はやけに静かだろう? そのことだ。―――まあ、普段うるさいから、調度良いくらいだがな」
 助け舟を出した。…やけに棘を持っていたけれど。
「ああ、鎮君の話だったんですか」
 へにゃー、と笑いながら、それに普通に返す琴架先輩。
 良いのかな。この人は一応(というかなんというか)梶木先輩の彼女、という位置に居る人なのだけど。…ていうか、世の中ってほんと不思議だ。なんでこの二人? あたしたちが入学する前くらいに付き合い始めたのだと聞いたけれど、その経緯を聞いたことはなかった。――いやこんなことは今どうでも良いんだった(といったら琴架先輩に悪いか。もう片方には特別どうとも感じないけれど)。
「んー…」
 顎に人差し指を当て、何か悩むようなポーズ。しばらくそうして、
「ごめんなさい。わからないです」
 申し訳無さそうに琴架先輩は目を伏せた。なんだかこっちが悪いことをしている気分だ。なんでだろう。
「あ、いえ…わからないのなら、別に良いんです。うん」
「そうですよ。気にしないでください」
 あたしとイオリが慌ててフォローを試みる。ったくもう、アンタの所為だぞ、と半ば八つ当たり気味に副部長を睨み付けると――――バッチリ目が合った。………げ。
 ニヤ、と梶木先輩の口元が歪む。そして大声で、
「よーっし、近江、久遠、お前らの出番だッ! 頑張ってこい! 俺の―――基、写真部のためにッ!」
「「…………は?」」
 その様子に、嵐の前の静けさ、という言葉が頭に浮かんだ。
 …のだが、その前に一体何の話だ、これ?

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登場人物

++ 近江利央(オウミ・リオ) ++
 青い空を見るのが夢。面倒臭がり屋だが、苦労性。

++ 久遠イオリ(クオン・イオリ) ++
 利央の幼馴染兼親友。小一からずっと同じクラスという仲(利央曰く、腐れ縁)。面白いことが好き。

++ 加嶋夏夜(カシマ・カヨ) ++
 写真部顧問。男勝りな性格。部室である資料室を占拠している本やら何やらは、大半がこの人の私物。

++ 加嶋冬夜(カシマ・トウヤ) ++
 夏夜の弟で、転校生。空色の瞳を持つ。

プロフィール
HN:
岩月クロ
HP:
性別:
女性
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