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「疲れた~っ」
「右に同じー」
といっても、校内(廊下)にそうそう椅子やベンチなんてものがあるはずもない。それでも座りたいという衝動は強く、あたし達は結局その場で座り込んだ。お行儀良く、なんて言っている余裕はない。あったらしてない。
特に疲労の色が濃いのはあたしの方か。
当然だ。イオリは運動部だったのだし、体力はあたしよりもある。そのイオリですら、多少疲れが顔に滲み出ているのだから、あたしがこれくらいなのは、むしろ妥当というべきか。
ああ、そう。ちなみにその運動部。雨降っているから、普通に空の下で、なんて出来ない。けど、この街を出れば、雨も止んでいるらしいから、隣の街が近くにあるってところでは、そっちまで行っているらしい。
ここは生憎とそこから随分と離れているから、運動部は、大きな体育館と、それに隣接した、雨避けがついたグラウンドでその活動を行っている。これは完全に余談だが、体育の授業もここを使っている。
ただし、あたしは毛頭、運動部に入る気はないわけで。ついていける自信もない。だからこうして、文化部を渡り歩いている。
イオリは大方、運動部だろうから、こうしてあたしについてくる利点はないんだろうけど、でも一緒にいてくれると心強い、というか何と言うか。一人だったらもうそろそろ「どーでもいい、もう帰ろう」という思いが生まれてきて、その思いを実行に移して即効で帰っていることだろう。
先に立ち上がったイオリが前かがみになって、未だ座り込んでいるあたしに手を差し出した。
「利央、大丈夫?」
「ん。なんとか」
手を取って、立ち上がりながら、軽く頷いた。
「あはは、この校舎、見た目以上に広いみたいだからね~」
「だね」
誰だ校舎をこんな複雑なつくりにしたヤツ。…って、そんなこと言ったって仕方ないけど。
「あと、どこ回ってない?」
「美術部と写真部」
あたしの質問に、イオリが即座に答えた。
「美術部は分かるけど…なに、写真部? そんなんあるの?」
「書いてあるってことは、あるんじゃないの?」
私に聞かないでよ、と言うイオリに、それもそうだと心の中で同意する。
「写真部ってどこでやってるんだろうねえ」
「さあ。現像とかもやってるんなら、部室はあると思うけど」
「そりゃあねえ」
校内マップを二、三度見直す。
「でも、場所書いてないんだけどさ」
「知らないわよ、そんなこと。顧問誰? そっちに聞けば分かるんじゃない?」
なるほど。ぽん、と手を打つ。確かに顧問の方に話を聞けば、詳しいことまで教えて貰えそうだ。…いや別に、詳しい話が聞きたいわけではないのだけれど。
(写真ねえ…)
興味はある、といえばあるけど。でもそれなら、他の部活でも同じだ。多少興味をそそられたものは二、三あった。
しかしまあ、部活選びの参考にはなるだろうと思い直し、あたしは手に持っていたプリントの束――というのも、部に寄るごとに何かしらの説明(紹介ともいう)が書いてあるプリントを手渡されたからだった――から、校内マップと共に渡されていた各部活の大まかな説明などが載っている物を探し出し、そこにある写真部の欄を探す。
文字を目で追う。目的のものを見つけるのに、そう時間はかからなかった。
++ アトガキ ++
短く短く切ってupしてますが、これってAct1、どこまで続くんだろう。
…とか思ってみたり。
それでは、
ここまで読んで頂きありがとうございましたっ♪
++ 近江利央(オウミ・リオ) ++
青い空を見るのが夢。面倒臭がり屋だが、苦労性。
++ 久遠イオリ(クオン・イオリ) ++
利央の幼馴染兼親友。小一からずっと同じクラスという仲(利央曰く、腐れ縁)。面白いことが好き。
++ 加嶋夏夜(カシマ・カヨ) ++
写真部顧問。男勝りな性格。部室である資料室を占拠している本やら何やらは、大半がこの人の私物。
++ 加嶋冬夜(カシマ・トウヤ) ++
夏夜の弟で、転校生。空色の瞳を持つ。