[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
(……あった。これだ)
なになに、と他の部活と比べると大分短いその文を読む。
写真部――部員数11名(3年:4名 2年:3名)(顧問:加嶋夏夜)
・募集人数 …10名(多少のオーバーはOK)
・活動時間 …1週間の内、最低1日。あとは自主参加。
・活動内容 …デジカメ(など)での撮影等。
・活動場所 …活動範囲は自由。サボりは厳禁。休憩は許す。問題は起こすな。
「………なにこれ」
思わず声に出して呟いた。めちゃくちゃだ、ほんとに。なに最後の『問題は起こすな』って。いや、別にそれは正論なんだけどね、普通書くかなあ、て思うのはあたしだけ?
「顧問の名前、分かった?」
「へ? あ、うん」
当初の目的を忘れていた。
イオリに問いかけられて、ようやく我に返ったあたしは、紙に書いてあった名前を読み上げた。
「か、しま…なんだろ、これ。ごめん、読めない」
「どんな漢字?」
「『夏』に『夜』って書くみたい」
「あー…それは、どうなんでしょうねえ。本人に聞いた方が早いかもしれないわね」
なんて読むかは以前不明。で、その名前不明な加嶋先生を捜さないと。
「職員室行けば分かるかな?」
「分かるんじゃない?」
なら、行こう。手元にあった校内マップで、職員室の場所を探していると、隣からイオリがひょい、と覗き込んで、
「ここじゃない?」
指で場所を示した。…あたしの方が先に探し始めたはずなんだけどなぁ。うん、さすがはイオリ、とでも言うべきか。
「途中に美術室があるけど、どうする? 寄ってく?」
「うーん。どうしようかな…」
これまで全部見てきたのだから、この際で文化部は全て見ておきたいところだけど…。
ちらり、と空を見る。雨足はだいぶ弱まっている。帰るんだったら、今が狙い目だ。…教室出る時が一番の狙い目だったってことは、この際置いとく。次いで時計に目をやる。もうそろそろ家路につきたい時間。
(あと回るなら、一箇所くらいかな)
美術部と写真部、そのどちらに行くか。天秤にかけてみる。美術部も写真部も、何をやるのかは想像がつく。確かめたいのは、部活の雰囲気。こればっかりは、実際に行ってみなければ分からないものがある。
明日行く? …はっきり言って、それは面倒。今のうちにさっさと入りたいものを決めておきたい。この仮入部届、仮だってのに何故だかハンコが要る。更にこれは、担任ではなく、顧問に直接渡さなくてはいけないらしいので、面倒なことこの上ない。
いざとなったら、ハンコだけ押して、学校でその内容を書いてしまう、という手もあるのだけれど。それでも顧問を捜すという手間が…。
…話が逸れたかな。なんだっけ。そう、美術部か写真部かの話だ。
少し考えて、
「写真部にそのまま直行しよ。ちょっと興味あるしね」
結論を出した。
どうしてこっちを選んだのか。…きっと部活紹介の文章を書いた人物のことが気になっただけだ。
++ 近江利央(オウミ・リオ) ++
青い空を見るのが夢。面倒臭がり屋だが、苦労性。
++ 久遠イオリ(クオン・イオリ) ++
利央の幼馴染兼親友。小一からずっと同じクラスという仲(利央曰く、腐れ縁)。面白いことが好き。
++ 加嶋夏夜(カシマ・カヨ) ++
写真部顧問。男勝りな性格。部室である資料室を占拠している本やら何やらは、大半がこの人の私物。
++ 加嶋冬夜(カシマ・トウヤ) ++
夏夜の弟で、転校生。空色の瞳を持つ。