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一通り事情を聞き終わった(説教が終わったともいう)逆井先輩の下に、皆が自然と集まった。
「それで、どういうことになったんですか…?」
「ああ。本人の意思を尊重するんだそうだ」
普通なら、それが当たり前なんだけどな。と付け足された言葉に、うんうんと何人かが頷き、残りは苦笑するに留まった。
しかし、全然『本人の意思を尊重』しているようには見えないんだけどね、後ろの二人。その本人を見る目が、入れ入れと言ってるし。あれは一種の脅しだと思う。まあ、ぎゃあぎゃあと喚き出さないだけマシなのかもしれないけど。
「で、どうしたいんだ、君は?」
「俺は…」
歯切れの悪い言い方。琴架先輩が安心させるように笑った。
「別に今決めなくても良いんですよ? わたしたちに気を遣うこともないですから」
「枝折の言うとおりだ」
それでも決めかねているようで、うーん、と悩んでみせる。
「わかった」
「何がですか、梶木先輩」
何がわかったというのか、むしろ何を思いついたのか。どうせ碌なことじゃないだろうが、と目を向ければ、梶木先輩は先程の説教のことなどすっかり忘れた様子で(つまり完全復活していて)、にい、と笑うと、
「それじゃ、写真部に入ってくれたら、なんでも無条件で一つ願いを叶えるというのはどうだ?」
めちゃくちゃなことを言い出してくれた。
「どうしてそうなるんですか…っていうか、全然反省してませんよね」
「なんでも、っていうのはさすがに無理があるんじゃ」
あたしとイオリが口を挟むと、
「大丈夫だ。まあ、八人いればなんとかなるだろ」
「なんで俺たちまで協力することになってるんだ、梶木?」
それは、そうだ。なんで手伝わなくちゃいけないのか。
ていうか、八人? あれ? 一年が真奈ちゃんと和羽くんで、二年があたしとイオリでしょ? それで四人。あと、三年が三人。あわせて七人で数が合わないんですけど…――――もしかして、夏夜先生も入ってるの?
「うん。で、つーわけだから、入れ?」
何が『うん』で、どこが『つーわけだから』なのか、全くわからないんですが。最後、語調は上げたけど、普通に命令形じゃないか。
加嶋冬夜はというと、――――何故か悩んでいた。
おい、まさか、ちょっと待て?
その表情を見てか、他の面々も、あれ、まさか、という顔をしている。
「それじゃあ、」
次に出てきた言葉に、あたしたちは、むしろあたしは、しばらく呆気に取られて、まともに思考が働かなかった。
憶えているのは、梶木先輩と夏夜先生が、やけに嬉しそうな…基、“愉しそうな”顔をしていたことくらいだ。見ている側まで嬉しくなるような、なんてものでは断じてなく、見ている側を不安にさせ―――あたしの場合は苛立ちすら覚える、そんな顔だ。
(あー…あの後クラッカー、ちゃんと夏夜先生からも取り上げといて良かったな。鳴らされたら堪ったもんじゃないし)
思考が現実逃避して、そんなどうでも良いことを思った。
++ 近江利央(オウミ・リオ) ++
青い空を見るのが夢。面倒臭がり屋だが、苦労性。
++ 久遠イオリ(クオン・イオリ) ++
利央の幼馴染兼親友。小一からずっと同じクラスという仲(利央曰く、腐れ縁)。面白いことが好き。
++ 加嶋夏夜(カシマ・カヨ) ++
写真部顧問。男勝りな性格。部室である資料室を占拠している本やら何やらは、大半がこの人の私物。
++ 加嶋冬夜(カシマ・トウヤ) ++
夏夜の弟で、転校生。空色の瞳を持つ。